「友人のカードが不正利用されたらしい」「ニュースでクレジットカードの不正利用被害が過去最多という報道を見た」——そんな話を聞くと、自分のカードは大丈夫なのか不安になります。この記事では、クレジットカードの不正利用がなぜ起きるのか、主な原因と手口を整理したうえで、自分の対策で防げるものと防げないものを分けて説明し、今日から実践できる予防策をまとめました。
クレジットカードの不正利用はどれくらい起きている?
一般社団法人日本クレジット協会の集計によると、2025年(1月〜12月)のクレジットカード不正利用被害額は510.5億円で、前年比8.0%減少しました。内訳は、カード番号だけが盗まれてネット決済などに使われる「番号盗用」が475.4億円で全体の93.1%を占め、偽造カードによる被害は7.2億円(1.4%)、その他の不正利用が27.9億円(5.5%)でした。クレジットカードショッピングの取扱額全体に占める不正利用被害額の割合を示す「不正利用発生率」は2025年通年で0.038%です(出典: 一般社団法人日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の集計結果について」2026年3月6日発表)。
被害の9割以上を占める番号盗用は、カード本体を盗まれなくても、カード番号・有効期限・セキュリティコードの情報だけで成立します。「カードは手元にあるから安全」とは限らない、という点がまず押さえておきたい前提です。
なぜ不正利用は起きる?主な原因と手口
番号盗用が被害の中心になっている背景には、いくつかの手口が組み合わさっています。手口ごとに、利用者が気づきやすいものと気づきにくいものがあります。
フィッシング詐欺
カード会社や通販サイト、宅配業者などを装ったメール・SMSで偽のサイトに誘導し、カード番号やログイン情報を入力させる手口です。フィッシング対策協議会の集計では、2024年の1年間に寄せられたフィッシング報告件数は1,718,036件で過去最多となり、前年の約1.44倍に増えました(出典: フィッシング対策協議会「フィッシングレポート2025」)。クレジットカード会社や信販会社を装った偽サイトも継続的に報告されており、本物の通知と見分けがつきにくい作りになっているものが少なくありません。
ECサイト・加盟店からの情報漏えい
自分が利用した通販サイトや店舗のシステムが不正アクセスを受け、保存されていたカード情報が外部に流出するケースです。この場合、利用者自身がどれだけ注意していても、漏えい元の管理不備が原因であるため、個人の対策だけでは防ぎきれません。
スキミング
店舗の決済端末やATM、自動精算機などに取り付けられた読み取り装置で、カードの磁気情報を読み取られる手口です。ICチップ対応の決済が広がったことで発生しにくくなっていますが、磁気ストライプでの決済を求められる場面では依然としてリスクが残ります。
漏えいした情報の転売・悪用
警察庁が公表する脅威情勢の報告では、不正に入手されたカード情報がインターネット上で転売され、入手した別の人物が通販サイトで商品を購入するなど、情報の流通と悪用が分業化している事案が確認されています(出典: 警察庁サイバー警察局「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」)。どこで漏れた情報が、いつ悪用されるかを利用者側が把握することは難しく、この点も個人の対策には限界があることを示しています。
不正ログイン・リスト型攻撃
別のサービスから流出したメールアドレスとパスワードの組み合わせを使って、通販サイトやカード会社のマイページに不正ログインを試みる手口です。登録済みのカード情報がそのまま決済に使われたり、ログイン後にカード情報を新たに入力させられたりします。パスワードを複数のサービスで使い回していると、自分が利用したことのないサービスでの漏えいが、カードの不正利用につながることがあります。
自分の対策で防げるもの・防げないもの
不正利用のニュースを見ると「何か対策をしなければ」と考えがちですが、対策には防げる範囲と防げない範囲があります。どちらも正直に知っておくことが、不安との付き合い方として現実的です。
自分の対策で防げるもの
- フィッシングメール・SMSのリンクからカード情報を入力してしまうこと
- パスワードの使い回しによる不正ログインの連鎖
- 暗号化されていない公共Wi-Fiでカード情報を送信してしまうこと
- 不審な取引への気づきが遅れること(利用明細の確認習慣で早期発見できる)
自分の対策だけでは防ぎきれないもの
- 利用した加盟店・通販サイト側のシステムからの情報漏えい
- すでにどこかで漏えいした自分のカード情報が、別の場所で売買・悪用されること
- 店舗の決済端末に仕掛けられたスキミング装置
これらが起きた場合、利用者側に過失がなくても被害に遭う可能性があります。そのため「対策をしていれば不正利用は絶対に起きない」とは言えません。できるのは、発生のリスクを下げることと、起きたときに早く気づいて被害を小さくすることの両方を意識することです。
今日からできる予防策
完全に防ぐことはできなくても、リスクを下げる行動は複数あります。今日から始められるものを挙げます。
- 利用通知をリアルタイムで受け取る設定にする: カード会社の公式アプリやメールで、決済のたびに通知が届くよう設定します。身に覚えのない通知にすぐ気づけます
- 本人認証サービス(3Dセキュアなど)を有効にする: ネット決済時に追加の認証を求める仕組みで、カード情報だけの不正利用を防ぐ効果があります
- フィッシングメール・SMSのリンクを開かない: カード会社や通販サイトの公式サイトには、メール内のリンクではなく検索やブックマークからアクセスする習慣をつけます
- サービスごとにパスワードを使い分ける: 他サービスで流出したID・パスワードの組み合わせを使い回していると、不正ログインにつながります
- 公共Wi-Fiでカード情報を入力しない: 暗号化されていない通信は内容を読み取られるおそれがあります
- 使っていないカードを解約し、保有カードと紐付けサービスを把握する: 管理できるカードの数を減らすと、異常への気づきも早くなります
- 利用明細を月1回以上は目視で確認する: 小額の不審な決済がテストとして行われることもあるため、金額の大小にかかわらず確認します
パソコンやスマートフォン経由での情報漏えいが気になる場合は、PCのセキュリティソフトの選び方や、公共Wi-Fiを使う機会が多い人向けのVPNが必要かどうかの判断基準もあわせて確認しておくと、カード情報を含む個人情報全体の防御につながります。
もし不正利用に気づいたら
利用明細を確認していて身に覚えのない取引を見つけた場合は、不安を感じている時間よりも先に行動した方が被害の拡大を防げます。最優先はカード会社への連絡によるカードの利用停止で、その後に明細の記録・警察への相談・カードの再発行・補償の申請という順番で対応します。具体的な手順と、カード会社ごとに異なる補償条件の確認ポイントはクレジットカードが不正利用されたら?今すぐやることと補償の確認ポイントにまとめています。
よくある質問
対策をしていれば不正利用は絶対に防げますか?
防げません。この記事で挙げた対策は、利用者側の操作に起因するリスクを減らすものです。加盟店側の情報漏えいやカード情報の転売による悪用は、利用者の対策だけでは防ぎきれません。対策と早期発見の両方を意識することが現実的な向き合い方です。
家族カードや追加カードも同じ対策が必要ですか?
必要です。家族カードも本カードと同じカード番号体系を使う場合があり、利用通知の設定やパスワード管理は家族全員で共有しておくと、気づきが早くなります。
スマートフォンの決済アプリに登録したカードも同じリスクがありますか?
決済アプリに登録したカード情報も、アプリやそのアプリに関連するサービスの不正ログインを通じて悪用されるおそれがあります。アプリ側のログインパスワードや二段階認証の設定も、カード本体の対策と同じ優先度で見直してください。
キャッシュレス決済(QRコード決済)に登録したカードも同じリスクがありますか?
QRコード決済アプリにクレジットカードを登録している場合、カード自体の対策に加えて、決済アプリのログインID・パスワードや残高チャージの履歴も確認対象になります。アプリ側の不正ログインに気づかないまま、登録済みのカードから残高チャージが繰り返されるケースもあるため、カードの利用通知とアプリの通知を両方確認する習慣をつけてください。
不正利用に一度遭うと、また起きやすくなりますか?
再発行後に再び不正利用が起きた場合は、カード情報がどこかで継続的に漏えいしている可能性があります。よく利用する通販サイトのパスワード変更や、フィッシング被害に心当たりがないかの見直しもあわせて行うことをおすすめします。
まとめ
クレジットカードの不正利用は、フィッシング詐欺・加盟店からの情報漏えい・スキミング・漏えいした情報の転売など、複数の原因が絡んで起きています。このうちフィッシングや公共Wi-Fiでの入力、パスワードの使い回しは利用者側の対策でリスクを減らせますが、加盟店側の情報漏えいや情報の転売は個人の対策だけでは防ぎきれません。利用通知の設定や明細の定期確認といった今日からできる対策を続けながら、万が一不正利用に気づいた場合は早めにカード会社へ連絡することが、被害を小さく抑える現実的な方法です。



