インターホンが鳴った瞬間、画面も見ずに「居留守を使っていいのだろうか」と迷う一人暮らしの人は少なくありません。結論から言うと、見知らぬ来訪者への対応に法律上の義務はなく、居留守そのものは違法でも非常識でもありません。この記事では、居留守が問題にならない法的な根拠と、来訪者のタイプ別に「居留守でよいか・対応すべきか」を整理したうえで、一人暮らしでも安全に使えるインターホン・防犯グッズの選び方まで解説します。
居留守は違法? 法律上の結論
先に結論を言うと、訪問してきた相手にドアを開ける義務も、インターホンに応答する義務も、法律上は存在しません。居留守を使うこと自体が犯罪になることはなく、「失礼かもしれない」という気まずさの問題であって、法的な問題ではないというのが実際のところです。
訪問販売・勧誘は特定商取引法で「断る権利」が守られている
訪問販売は特定商取引法の規制対象で、同法第3条の2では「再勧誘の禁止」が定められています。消費者が「結構です」「お断りします」と契約しない意思をはっきり示した場合、事業者はその場で勧誘を続けることはもちろん、後日あらためて訪問・電話で勧誘することも禁止されます。つまり居留守を使わずとも断る権利は法律で保護されていますが、対応そのものを避けたい場合に居留守を選んでも問題はありません。
NHKの受信料訪問も「対応義務」はない
NHKの受信料については、放送法第64条で「受信設備を設置した者は受信契約を結ばなければならない」と定められています。しかしこれは契約を結ぶ義務であって、訪問してきた担当者に応対する義務ではありません。ドアを開ける義務も居留守を使わない義務もなく、無視したこと自体で罰則が科されることはありません。2023年4月からは受信設備を設置しながら正当な理由なく契約・届出をしない場合に受信料の2倍相当の割増金が課される制度が始まっていますが、これは契約手続きそのものの話であり、訪問時の居留守対応とは別の論点です。
「不退去罪」が成立するのは居座った相手の方
刑法130条後段の不退去罪は、住人から退去を求められたにもかかわらず住居等に居座り続けた場合に成立する犯罪で、法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です(2025年6月1日施行の刑法改正により、懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されています)。訪問販売員や勧誘者が「帰ってください」と言われても居座り続けた場合に問われるのはこちらの犯罪であり、居留守を使う側・断る側が罪に問われることはありません。
例外は「本人限定受取郵便」などその場での本人確認が必須な郵便物
行政からの通知や金融機関の書類に使われる本人限定受取郵便、裁判所からの特別送達などは、受取人本人がその場で身分証を提示しないと配達が完了しない仕組みになっています。これらは居留守を続けても配達員側が郵便局に持ち帰るだけで、通知書や再配達の案内がポストに残ります。放置すると手続きの期限が過ぎてしまう可能性があるため、不在票の内容が重要な郵便物かどうかはあとで必ず確認しておきましょう。
来訪者タイプ別「居留守でよいか」早見表
とはいえ、すべての来訪者を一律に居留守で済ませてよいわけではありません。宅配便や公的な立場の人など、対応したほうが結果的にスムーズなケースもあります。来訪の目的別に整理すると次のようになります。
| 来訪者の種類 | 居留守の可否 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 訪問販売・セールス | ◎ 居留守でOK | 対応義務なし。断る意思を示せば再勧誘も法律で禁止される |
| NHK受信料の集金・訪問 | ◎ 居留守でOK | 放送法64条は契約義務であり、訪問対応の義務ではない |
| 宗教・政治活動の勧誘 | ◎ 居留守でOK | 応対義務なし。しつこい場合は不退去罪の対象になり得るのは相手側 |
| 宅配便(再配達依頼・時間指定済み) | △ 対応推奨 | 居留守にすると不在票・再配達の手間が増える。声だけ返すのが現実的 |
| ガス・電気の点検(事前通知あり) | △ 要確認 | モニター越しに身分証を確認。不安なら管理会社やライフライン元に電話確認 |
| 警察官・行政職員を名乗る人 | △ 要確認 | 本物でも居留守は可能。不安な場合は警察相談専用電話など別経路で真偽確認 |
| 同じ相手が繰り返し訪問・在宅確認してくる | × 要警戒 | ストーカーや空き巣の下見の可能性。居留守だけで済ませず記録・相談を |
安全に居留守を使うための3つの防犯ポイント
居留守は「何もしない」ことではなく、相手を確認したうえで応答しないという選択です。安全に使うには次の3点を押さえておくと安心です。
モニター付きインターホンで姿を見せずに相手を確認する
音声のみの旧式インターホンでは、応答しなければ相手の様子が一切わかりません。モニター付きのインターホンなら、画面を見るだけで相手の服装や人数、不審な荷物の有無を確認でき、応答するかどうかの判断材料になります。賃貸でも配線工事なしで後付けできるワイヤレスタイプが増えており、玄関ドアの外側に設置するだけで使えるモデルもあります。インターホンにカメラ機能を足す具体的な選び方はインターホンに防犯カメラは必要?後付けタイプの選び方で詳しく解説しています。
「出ない」と「声を変えて対応する」を使い分ける
完全に無応答にすると、逆に在室状況を悟られないメリットがある一方、宅配便などの正当な来訪まで取りこぼしてしまいます。インターホンのボイスチェンジャー機能を使って低い声で応答すれば、一人暮らしであることを隠しながら「今は手が離せません」と伝えられます。女性の一人暮らしでは特に有効な対応です。
補助錠・ドアチェーンで「開けさせない」仕組みを作る
居留守で応答しなかった相手が強引にドアをこじ開けようとする可能性はゼロではありません。ドアチェーンや本締まり錠に加えて、工事不要の補助錠を設置しておけば、万一応答してしまった場合でもドアを大きく開けずに来訪者と話せます。玄関まわりの対策は玄関の防犯対策おすすめ完全ガイドで補助錠・スマートロック・センサーの選び方をまとめています。
一人暮らしにおすすめの防犯インターホン・グッズ
居留守を安全に機能させるための機器選びのポイントは「モニターがあること」「録画・ボイスチェンジャーなど応答以外の手段があること」「賃貸でも設置できる工事不要タイプであること」の3点です。
玄関ドアそのものの防御力を上げたい場合は、後付けできる補助錠やドアチェーンも併用すると安心です。
夜間の来訪が不安な場合は、人感センサーライトを玄関先に設置して相手の顔がモニターにはっきり映るようにしておくのも効果的です。夜の物音が気になって眠れないという人は一人暮らしの夜、物音が気になって眠れない人への防犯チェックも参考にしてください。
宅配ボックス・置き配の設定で「対応そのもの」を減らす
そもそも来訪への応答回数を減らしたい場合は、宅配ボックスの設置や各配送業者の置き配指定を使う方法もあります。玄関先に対面で立つ機会が減れば、居留守の判断に迷う場面自体が少なくなります。賃貸でも後付けできる簡易型の宅配ボックスであれば、工事なしでドアノブや手すりに固定できるタイプが選べます。
居留守をやめて対応すべきケース
一方で、次のような場面では居留守よりも対応した方が安全です。
- 宅配便の再配達依頼・時間指定をした荷物:居留守にすると不在票・再配達の手間が増えるだけで防犯上のメリットがない
- 事前に管理会社やライフライン事業者から点検の通知が届いている場合:モニターで身分証を確認したうえで応対した方がトラブルを避けやすい
- 同じ人物・車が繰り返し家の前に現れる、在宅時間を探るような訪問が続く場合:居留守だけで様子を見るのではなく、日時と状況を記録し、早めに警察や管理会社へ相談する
特に最後のケースは、空き巣の下見やストーカー被害の初期段階である可能性があります。一人暮らしで不安を感じやすい女性や、1階の部屋に住んでいる人は、来訪者対応だけでなく住まい全体の防犯対策も見直しておくと安心です。女性の一人暮らし1階の防犯グッズおすすめ15選や一人暮らし・単身女性のホームセキュリティおすすめ3選も合わせて確認してみてください。男性の一人暮らしでも、来訪者対応を含めた基本的な防犯の考え方は一人暮らし男性の防犯対策にまとめています。
まとめ:こんな人におすすめ
インターホンへの居留守は、来訪者への対応義務が法律上ないことを根拠にした、ごく一般的で安全な選択です。訪問販売・NHK集金・宗教勧誘などは居留守で問題ありませんが、宅配便や事前通知のある点検は対応した方がスムーズで、同じ相手の不審な繰り返し訪問には警戒が必要という使い分けがポイントです。モニター付きインターホンと補助錠を組み合わせておけば、姿を見せずに相手を確認し、必要に応じて声だけで対応することもできます。一人暮らしを始めたばかりで来訪者対応に不安がある人は、まずインターホンをモニター付きタイプに切り替えることから始めてみてください。


