「さっきまでそこにいたのに、目を離した隙に外に出ていた」。認知症の家族と暮らしていると、こうした一瞬のすれ違いが大きな不安につながります。警察庁によると2025年に届け出があった認知症に関する行方不明者は1万7,345人にのぼり、高水準のまま推移しています。この記事では、GPS端末と玄関の開閉センサーという2つの手段について、料金・仕組み・向き不向きを具体的な製品名と価格で整理し、今日から検討できる対策をまとめます。
認知症の「徘徊」はどれくらい起きている?知っておきたい数字
2025年に全国の警察に届け出があった認知症やその疑いがある行方不明者は1万7,345人で、男性9,715人・女性7,630人でした。所在が確認できた1万6,729人のうち、届出受理当日に発見されたのは1万1,369人、2〜3日以内が4,487人で、94.8%が3日以内に見つかっています。一方で573人は死亡が確認されており、「早く見つける」こと自体が最優先の課題だとわかります。
注目したいのは、GPS機器が活用された139人のケースです。そのうち118人(84.9%)が届出受理当日に発見されており、GPSなしの全体当日発見率(約68%)を大きく上回っています。つまりGPSは「見つかる確率」ではなく「早く見つかる確率」を上げる手段だといえます。
GPS端末と玄関センサー、役割の違いを比較表で整理
「GPSを持たせるか」「玄関にセンサーを付けるか」は、どちらか一方を選ぶものではなく、検知するタイミングが違う別の機能です。まず全体像を比較表で確認してください。
| 項目 | GPS端末(まもサーチ3 等) | 玄関開閉センサー(SwitchBot 等) |
|---|---|---|
| 検知するタイミング | 外出した後、今どこにいるか | 玄関の扉が開いた瞬間 |
| 本体価格の目安 | 5,000円前後 | 3,500円前後(単体) |
| ランニングコスト | 月額500〜750円程度 | 基本無料(遠隔通知にはハブが別途必要) |
| 本人の協力 | 携帯・装着してもらう必要がある | 不要(玄関に設置するだけ) |
| 弱点 | 持ち出し忘れ・充電切れがあると使えない | 玄関以外の出入口からの外出は検知できない |
| 向いている人 | 外出後に居場所がわからなくなることが多い | 外出した事実にすぐ気づきたい・未然に声をかけたい |
※価格は2026年11月時点の公式サイト・主要ECサイトの表示価格を基にした目安です。セールやキャンペーンにより変動します。
GPS端末で「今どこにいるか」を確認する
料金・費用
高齢者の見守りGPSとして広く使われている「まもサーチ3」は、本体価格5,280円(税込)、通信料は月額528円(税込)または年額5,500円(税込)です。事務手数料や解約金は不要で、契約期間の縛りもありません。アプリから課金を止めれば、次回の支払いタイミングで利用が終了します(支払済みの料金は返金されません)。
子ども向けとしても展開されている「GPS BoTトーク」は、端末価格5,280円(税込)に対し、位置情報のみのGPSプランが月額528円(税込)、通話機能付きのGPS&トークプランが月額748円(税込)の2段階です。高齢の家族が声でやり取りできる安心感を重視するなら後者が候補になります。
サービス内容・特徴
いずれもIP65程度の防水防塵に対応し、専用アプリの地図上で現在地を確認できます。まもサーチ3は電池が約2週間持続するタイプで、充電の頻度を抑えられる点が特徴です。キーホルダー型・靴に入れるタイプなど、本人が気づきにくい形状の製品もあり、「GPSを持たせていることを意識させたくない」という希望にも対応できます。
メリット・デメリット
メリットは、実際に外出してしまった後でも居場所を特定できることです。先述のとおりGPS利用時の当日発見率は84.9%で、発見までの時間短縮に直結します。デメリットは、本人が端末を身につけていなければ機能しない点です。上着を着替えた日や、充電を忘れた日には追跡できません。衣類やカバンなど複数の場所に分散して装着する、充電をリビングでの定位置作業に組み込むといった運用の工夫が必要です。
本人が身につけるのを嫌がる場合の工夫
GPS端末の最大のハードルは、本人が「持たされている」と感じると外してしまうことです。対策として、普段から使っている上着の裏地やカバンの内ポケットに縫い付ける、ベルトのバックルやキーケースに一体化したタイプを選ぶといった方法があります。まもサーチ3やGPS BoTトークは専用ケースやキーホルダー型のオプションが用意されているため、本人の持ち物に紛れさせやすい形状を選ぶことが継続利用のポイントになります。靴の中敷きに入れるタイプのサービスを提供する事業者もあり、外出のたびに必ず履く靴に組み込めば装着忘れ自体を防げます。
玄関センサーで「外に出た瞬間」に気づく
料金・費用
「SwitchBot 開閉センサー」は単体3,480円(税込)で購入できます。ただしBluetooth接続が基本のため、外出先にいるときにスマートフォンへ通知を受け取るには、別売りのSwitchBot ハブミニ(5,480円・税込)との組み合わせが必要です。両方がセットになった「SwitchBot 開閉センサーセット」は8,480円(税込)で、単体購入より割安です。月額料金は発生しません。
設置方法・通知の設定
玄関のドア枠とドア本体にシール状の本体を貼り付けるだけで設置が完了し、工事や電気工事は不要です。アプリ側で「23時〜5時に開いたら通知する」といった時間帯指定のオートメーションを組めるため、深夜だけ見守りを強化するといった使い方ができます。人感センサーを併用すれば、ドアが開く前の室内での動きも検知対象に加えられます。
メリット・デメリット
メリットは、本人に何も持たせずに外出の事実をリアルタイムで把握できることです。GPSのように携帯を忘れるリスクがありません。デメリットは、玄関以外の出入口(ベランダ・窓)から出た場合は検知できないこと、Wi-Fi環境やハブの電源が落ちていると通知が届かないことです。玄関だけでなく主要な窓にも開閉センサーを追加する家庭もあります。
自治体のGPS貸与・助成制度も確認する
多くの市区町村が、認知症高齢者等を介護する家族向けにGPS端末の貸与や利用料助成を行っています。品川区は加入時の初期登録料を助成する制度を、西宮市は位置探索システム専用端末機を無償で貸与する制度を運用しています。高崎市のように端末そのものを無料で貸し出す自治体もあります。助成の対象条件・端末の種類・申請窓口は自治体ごとに異なるため、まずはお住まいの市区町村の高齢福祉課・地域包括支援センターに「認知症高齢者等の位置探索(GPS)支援事業」の名称で問い合わせて確認してください。
よくある質問
スマートフォンのGPS機能だけでは不十分ですか?
本人がスマートフォンを携帯し続けてくれるなら、スマホの位置共有機能でも代用できます。ただし認知症が進むと、スマートフォンの充電や持ち出し自体を忘れてしまうケースが多く、専用のGPS端末のほうが「電池が長持ちする」「操作を本人がしなくていい」という点で見守り用途には向いています。
玄関以外の窓やベランダからの外出は防げますか?
開閉センサーは設置した場所の開閉しか検知できません。1階に庭やベランダへの出口がある住宅では、玄関だけでなく主要な窓やベランダの扉にも同型のセンサーを追加することで検知漏れを減らせます。SwitchBotの開閉センサーは1つのハブミニに複数台を接続できるため、設置箇所を増やしても通知先は1つのアプリにまとめられます。
自治体のGPS助成と市販のGPS端末、どちらを先に検討すべきですか?
自治体の助成制度は初期費用や月額の一部を補助してくれるため、対象条件に当てはまるなら先に確認したほうが費用を抑えられます。一方で自治体によっては指定機種が限られていたり、申請から利用開始まで数週間かかる場合があります。急いで対策したい場合は市販品を先に導入し、落ち着いてから自治体の制度に乗り換える、あるいは併用の可否を窓口で確認するという進め方も現実的です。
GPSと玄関センサー、併用するならどう組み合わせる?
実際の運用では、玄関センサーで「外に出た」ことに即座に気づき、追いつけなかった場合にGPSで現在地を特定するという2段構えが機能します。玄関センサー単体では一度外に出られてしまった後の追跡はできず、GPS単体では持ち出し忘れのリスクが残るため、どちらか一方に絞るよりも役割を分けて併用したほうが取りこぼしが少なくなります。予算を分けるなら、まず玄関センサー(単体3,480円前後、通知を使うならセットで8,480円前後)を先に導入し、外出の頻度が高い場合にGPS(初期費用5,000円前後・月額500円台)を追加する順番が無理のない進め方です。
まとめ:こんな人におすすめ
「とにかく早く外出に気づきたい」「本人に新しい物を持たせるのは難しい」という家庭は玄関開閉センサーが選びやすい選択です。「すでに何度か外出してしまったことがある」「外出自体は止められないが居場所だけは把握したい」という家庭はGPS端末が合います。両方を試す予算が難しい場合は、まず自治体のGPS助成制度の対象かどうかを確認してから、不足分を市販品で補う順番で検討してください。




