ニュースで情報漏洩や不正ログインの話を見るたびに、「自分のパソコンは大丈夫だろうか」と不安になる方は多いはずです。結論から言うと、パソコンには何らかのセキュリティ対策を入れておくことをおすすめします。Windows なら標準の Microsoft Defender を正しく使うだけでも立派な対策です。そのうえで、使い方によっては市販のセキュリティソフトを足す価値があります。
ただし、セキュリティソフトを入れれば安全になるわけではありません。この記事では、ソフトが防げるものと防げないものを分けたうえで、Defender で足りる人、市販ソフトを選ぶ人の違い、主要4製品の比較、今日からできる基本対策まで整理します。
個人が直面している情報漏洩の実態
IPA(情報処理推進機構)が2026年1月に公開した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、個人向けの脅威として次の10項目が挙げられています(公式ページは五十音順で掲載しており、順位はありません)。
- インターネット上のサービスからの個人情報の窃取
- インターネット上のサービスへの不正ログイン
- インターネットバンキングの不正利用
- クレジットカード情報の不正利用
- サポート詐欺(偽警告)による金銭被害
- スマホ決済の不正利用
- ネット上の誹謗・中傷・デマ
- フィッシングによる個人情報等の詐取
- 不正アプリによるスマートフォン利用者への被害
- メールやSNS等を使った脅迫・詐欺の手口による金銭要求
金融庁も、証券会社を装ったフィッシングサイトでログイン情報が盗まれ、第三者に取引される被害について注意喚起を続けています。金融庁の注意喚起ページ(2026年10月9日更新)には、利用者向けの対策として「事前に正しいウェブサイトのURLをブックマーク登録しておき、ブックマークからアクセスする。」「パスワードの使いまわしをしない。」といった項目が並んでいます。マルウェアによる情報窃取を防ぐ方法としては、「マルウェア(ウイルス等)対策ソフトを導入し、常に最新の状態に更新することが有効な手段となります。」と明記されています。
つまり公的機関が、セキュリティソフトの導入を基本対策の一つとして位置づけています。一方で、並んでいる対策の大半は「ソフト以外」の行動である点も見逃せません。
パソコンから情報が漏れる4つの経路
1. マルウェア(ウイルス・情報窃取型ソフト)
不審な添付ファイルや違法ダウンロードサイトなどから入り込み、保存されたパスワードやファイルを外部に送るものがあります。セキュリティソフトが最も得意とする領域です。
2. フィッシング
本物そっくりの偽サイトでログイン情報を入力させる手口です。ブラウザの保護機能や、製品の詐欺サイト対策である程度ブロックできますが、新しい偽サイトは検知が遅れることがあります。最後は自分の目で URL を確認する習慣が必要です。
3. 脆弱性の放置
OS やブラウザの更新を止めていると、既知の穴から侵入されます。これはソフトを入れても解決せず、更新そのものが対策です。
4. 不正サイト・偽警告
「ウイルスに感染しました」という偽の警告から電話をかけさせるサポート詐欺は、IPA の10大脅威にも入っています。サイトの危険度判定は製品が助けてくれますが、電話をかけてしまった時点で技術的な防御は効きません。
セキュリティソフトが防げるもの・防げないもの
| 脅威 | ソフトの効果 | 補足 |
|---|---|---|
| ウイルス・マルウェアの感染 | 効果が大きい | Defender も含め、リアルタイム検知が可能 |
| 危険な Web サイトへのアクセス | ある程度防げる | 新しい悪性サイトは検知が間に合わない場合がある |
| フィッシングサイト | ある程度防げる | 最終判断は URL の確認とブックマークからのアクセス |
| パスワードの使い回しによる不正ログイン | ほぼ防げない | パスワード管理と多要素認証が本命 |
| サービス側から流出した個人情報 | 防げない | 自分のパソコンの外で起きる漏洩 |
| 電話・SNS での詐欺(サポート詐欺含む) | 防げない | だまされないための知識が必要 |
| OS・アプリの脆弱性 | 一部補助にとどまる | 更新を適用することが基本 |
「入れれば安心」と考えると、かえって注意がおろそかになります。ソフトは複数ある防御の層の一つ、という位置づけで選ぶのが現実的です。
Microsoft Defender で足りる人、市販ソフトを足す価値がある人
Windows 標準の Microsoft Defender
Windows には Microsoft Defender が標準搭載されており、追加費用なしでウイルス対策を使えます。Microsoft の公式ドキュメントによると、他社製のウイルス対策ソフトを導入した場合、Defender は無効または受動モードに切り替わります。つまり、市販ソフトは Defender の代わりに働く形です。
「何も入れていない」状態と比べれば、はるかに安全な選択肢です。
Defender で足りやすい人
- パソコンの主な用途が Web 閲覧、動画視聴、メール、事務作業
- OS を自動更新にしており、不審なファイルを開かない習慣がある
- パスワード管理と多要素認証をすでに使っている
市販ソフトを足す価値がある人
- 家族のスマホやタブレットも含め、複数の端末をまとめて守りたい
- ネットバンキング、証券口座、ネット通販を日常的に使い、詐欺サイト対策を重ねたい
- フリーソフトのダウンロードや外出先の無料 Wi-Fi 利用が多い
- 設定の判断が苦手で、警告や対処を製品に任せたい
- VPN やパスワード管理など、付属機能をまとめて使いたい
Mac の場合
Mac には macOS 標準のマルウェア対策機能が備わっています。そのうえで、詐欺サイトやフィッシング対策、複数端末の管理を重視するなら、Mac 対応の市販ソフトが選択肢に入ります。購入前に、使いたい製品の対応 OS を公式サイトで確認してください。
古いパソコンを手放す前の情報消去も、情報漏洩を防ぐ大切な作業です。手順はパソコン処分時の個人情報の消し方の記事で解説しています。
主要セキュリティソフト4製品の比較
公式サイトまたは公式の価格告知で確認できた情報を中心にまとめました。価格はキャンペーンや販売店で変わるため、購入前に必ず最新の公式ページを確認してください。
| 製品 | 確認できた価格(税込) | 台数 | VPN | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| ノートン 360 シリーズ | 1年版 5,280円(1台)〜13,380円(10台)。3台まで 8,180円、3年版 15,480円 | 1・2・3・5・10台の区分 | あり(ノートンVPN スタンダード) | バックアップ容量が台数区分で異なる。公式ストア楽天市場店の比較表に基づく。スタンダード・デラックス・プレミアムと台数の対応は確認できていない |
| ウイルスバスター クラウド | 自動更新加入:1年 6,490円/2年 11,880円/3年 14,960円。更新契約(自動更新なし):1年 7,480円/2年 12,980円/3年 17,930円 | 公式告知に記載なし。購入ページで要確認 | 別製品「トレンドマイクロ VPN」あり | 2026年3月2日の改定後のトレンドマイクロ・オンラインショップ通常価格 |
| ESET HOME セキュリティ | ダウンロード版・新規・1年(希望小売価格) エッセンシャル:1台 4,750円/3台 6,050円/5台 7,350円 プレミアム:1台 5,940円/3台 7,240円/5台 8,540円 アルティメット:5台 14,260円(ほかの台数は確認できず) |
エッセンシャル・プレミアム:1・3・5台 アルティメット:価格表上は5台のみ確認 |
VPN利用台数:プレミアム最大3台、アルティメット最大10台。エッセンシャルは台数の記載なし | 国内販売元キヤノンITソリューションズの価格表より。2025年10月22日に価格改定。更新価格は別(1年自動延長などの区分あり) |
| カスペルスキー | 初回購入価格(定価)・1年版 スタンダード:1台 3,840円/3台 5,120円/5台 5,980円/10台 6,490円 プラス:1台 5,210円/3台 5,760円/5台 6,320円/10台 7,230円 プレミアム:1台 5,980円/3台 6,190円/5台 6,410円/10台 7,520円/20台 11,280円 |
スタンダード・プラス:1・3・5・10台 プレミアム:1・3・5・10・20台 |
スタンダードは VPN なし。プラス・プレミアムは あり | 更新価格は別で、公式ページでは契約情報を選ぶと表示される。1か月版があるのはカスペルスキー VPN のみ |
※2026年11月時点の情報です。ESETは希望小売価格、カスペルスキーは初回購入価格(定価)で、いずれも税込です。マカフィーは公式ページを確認できなかったため、今回は表に載せていません。
価格を比べるときの見方
- 初年度の価格だけでなく、2年目以降の更新価格を確認する。自動更新の加入有無で価格が変わる製品もある
- 1年版を毎年買うより、複数年版が割安になる場合がある。ノートン3台の場合、1年版 8,180円に対し3年版は 15,480円
- 台数が多いほど1台あたりの費用が下がる。家族で使うなら台数区分を先に決める
第三者機関(AV-TEST など)の評価を参考にする場合は、検査の実施時期と対象バージョンを公式の結果ページで確認してください。この記事では、特定の製品の優劣を順位づけしません。
失敗しにくい選び方のポイント
- 台数と OS:パソコン、スマホ、タブレットを合わせて何台か。Windows・Mac・Android・iPhone のどれが含まれるか
- 更新料:2年目以降の価格と、自動更新の仕組み
- VPN の同梱:付属するか、別料金か。台数や通信量の制限はあるか
- 詐欺サイト・フィッシング対策:ブラウザ拡張や SMS・メールの警告機能があるか
- 動作の軽さと使いやすさ:体験版や無料試用がある製品は先に試す
- サポート体制:電話やチャットでの問い合わせ窓口と対応時間
タイプ別のおすすめの考え方
- 費用をかけたくない・Windows のみ:Microsoft Defender を有効にし、OS 更新と多要素認証を徹底する
- 家族の端末をまとめて守りたい:台数区分が選べる製品(比較表ではノートン 360 が1〜10台、カスペルスキー プレミアムが1〜20台)を比較する
- VPN も一緒に使いたい:VPN が付属するグレードを選ぶ。VPN が付属するかどうかは製品ごとに違うため、比較表で確認してください
- 操作や判断に自信がない:サポート窓口が充実した製品や、警告を自動で処理してくれる製品を選ぶ
- パッケージ版で買いたい:ダウンロード版とカード版で価格が違うため、販売店の価格を見比べる
通販サイトでの販売状況は、以下から確認できます。リンク先の商品は台数や契約年数が比較表と異なる場合があるので、内容を確かめてから購入してください。
VPN はセキュリティソフトの代わりになるか
VPN は、通信を暗号化して公共 Wi-Fi などでの盗み見を防ぐ仕組みです。ウイルスの感染を防いだり、偽サイトを見破ったりする機能は基本的にありません。セキュリティソフトの代わりではなく、補う役割と考えてください。必要かどうかの判断軸とサービスの比較は、VPNでできること・できないことと選び方にまとめています。
ソフト以外に今日からできる基本対策
- OS・ブラウザ・アプリを最新にする:自動更新をオンにして、再起動の通知を後回しにしない
- パスワードを使い回さない:パスワード管理ツールで、サービスごとに長く推測されにくいものを使う
- 多要素認証を有効にする:特に金融・メール・ショッピングのアカウントを優先する。パスキー認証が使えるサービスは切り替える
- リンクを開かず、ブックマークから入る:メールや SMS の URL からログインしない
- バックアップを取る:外付けドライブやクラウドに定期的にコピーし、感染や故障に備える
- 家庭用カメラ・ルーターの設定も見直す:初期パスワードを変更する。見守りカメラの乗っ取り対策は防犯カメラのハッキング対策と安全な選び方で解説しています
まとめ:まずは何を入れるか
- まず、Windows なら Microsoft Defender が有効か確認する。これだけでも「何も入れていない」状態から大きく前進する
- 複数端末の管理、詐欺サイト対策、サポートが欲しいなら、市販ソフトを検討する
- どの選択でも、OS更新・パスワード管理・多要素認証・バックアップは欠かさない
製品を選ぶときは、必ず公式サイトで最新の価格・台数・対応 OS を確認してから契約してください。



