利用しているサービスから「お客様の個人情報が漏えいした可能性があります」という通知が届くと、何から手をつければよいか分からず不安になります。この記事では、個人情報保護委員会やIPA(情報処理推進機構)などの公的機関が示す対処法に基づき、漏えいの確認方法と、被害を広げないために今すぐやるべきことを優先順位つきで整理します。
今すぐやるべき5つの対処(優先順)
通知の内容を読む前に、まず次の順番で手を動かします。全部を一度にやる必要はありません。上から順に進めてください。
- 通知の送り主を確認する:本文のリンクは開かず、サービスの公式サイトやアプリに自分でログインして同じ案内が出ているか確認する
- 該当サービスのパスワードを変更する:同じパスワードを他のサービスでも使っている場合は、それらも変更する
- クレジットカード情報が対象に含まれる場合は、カード会社に連絡する:不正利用の有無を確認し、必要なら利用停止・再発行を相談する
- 届いたメール・SMSのリンクを安易に開かない:漏えい後は便乗したフィッシングメールが増える
- 本人確認書類(運転免許証・保険証など)が対象の場合は、信用情報機関へ本人申告を検討する
IPA(情報処理推進機構)も2026年10月26日公開の情報で、漏えいした情報の種類に応じてこの順番での対応を呼びかけています(出典:IPA「自分の個人情報等が漏えいした際の『対処』と『日頃の対策』」2026年10月26日)。
そもそも漏えいしたかどうかを確認する方法
サービス提供者からの通知を確認する
個人情報保護法の2022年4月施行の改正により、個人データを扱う事業者は「個人の権利利益を害するおそれが大きい漏えい等」が発生した場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務になっています(出典:個人情報保護委員会「漏えい等報告・本人への通知の義務化について」)。つまり、公式な通知が来ている場合は、その時点で該当する漏えいが実際に発生していると考えてよいという状況です。通知文に書かれた「いつの情報が」「どの項目(氏名・メールアドレス・パスワード・クレジットカード番号など)が」漏れたのかを、まず正確に読み取ります。
通知が来ていない場合の確認手段
ニュースで報道されたサービスを利用しているのに通知が来ていない場合は、次の手順で確認します。
- 該当サービスの公式サイトのお知らせ・プレスリリースを確認する(検索結果やSNSの転載ではなく公式ドメインを見る)
- サービスのサポート窓口(電話・問い合わせフォーム)に自分が対象かどうかを直接確認する
- クレジットカードを利用している場合は、カード会社から別途の連絡が来ていないか確認する
「個人情報が漏れているので確認・削除してあげる」という電話が国民生活センターや警察を名乗ってかかってくることがありますが、これらの機関がこの種の電話をかけることはありません。この時点で詐欺と判断して構いません。
漏えいした情報の種類別・具体的な対処法
ID・パスワードが漏れた場合
該当サービスのパスワードを速やかに変更します。長く複雑なものに変更し、同じパスワードを他のサービスでも使い回している場合は、それらのサービスのパスワードも合わせて変更します。可能であれば、二段階認証(多要素認証)やパスキーを設定すると、パスワードだけが流出した場合の不正ログインを防ぎやすくなります。パスワード管理の具体的なやり方は別記事でも扱っていますが、ここでは「同じパスワードを使っているサービスを全部洗い出す」ことが最優先です。
クレジットカード情報が漏れた場合
カード会社(発行元の銀行・信販会社)に連絡し、不正利用がないか利用明細を確認してもらいます。状況によってはカードの利用停止・再発行を相談することになります。不正利用が確認された場合の補償は、会員規約やカード会社ごとの条件によって異なるため、この記事では断定しません。契約しているカード会社のサイトで規約を確認するか、サポート窓口に直接問い合わせてください。クレジットカードの不正利用そのものについては、原因と予防策をクレジットカードの不正利用はなぜ起こる?原因と今すぐできる予防策で、不正利用に気づいた後の対象範囲と補償の確認ポイントはクレジットカードが不正利用されたら?確認すべきことと補償の確認ポイントで詳しく解説しています。
メールアドレス・電話番号が漏れた場合(フィッシング対策)
メールアドレスや電話番号そのものは、パスワードやカード番号と違ってそれ単体で不正ログインや決済に使われるわけではありません。ただし、漏えいをきっかけに「お客様の情報が漏えいしました。こちらで本人確認をしてください」といった便乗型のフィッシングメール・SMSが増える傾向があります。IPAは、突然届くこの種のメールやSMSは基本的に偽メールとして扱い、本文中のリンクを開かない・リンク先に情報を入力しないよう呼びかけています。サービスへのログインが必要な場合は、メール内のリンクではなく、普段使っているブックマークやアプリから直接アクセスしてください。
本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)が漏れた場合
運転免許証番号や保険証番号など本人確認に使われる情報が漏えいした場合、第三者がなりすましてクレジットカードやローンの契約を試みるリスクがあります。IPAは、次の信用情報機関への本人申告を検討するよう案内しています。
- 株式会社日本信用情報機構(JICC)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
本人申告の具体的な手続き方法・必要書類は各機関で異なるため、各機関の公式サイトで最新の案内を確認してください。
一人で判断できないときの相談窓口
詐欺かどうかの判断がつかない、具体的な被害が疑われるなど、自分だけで対応しきれない場合は公的な相談窓口を使います。相談は無料です。
| 窓口 | 連絡先 | 受付時間 | こんなときに |
|---|---|---|---|
| IPA情報セキュリティ安心相談窓口 | 03-5978-7509 / anshin@ipa.go.jp | 平日 10:00〜17:00 | 漏えい後の対処法が分からない、ウイルス・不正アクセスの不安がある |
| 警察相談専用電話 | #9110 | 平日中心(時間は都道府県警察により異なる) | すぐの事件化は分からないが警察に相談したい |
| 消費者ホットライン | 188 | 最寄りの消費生活相談窓口の案内時間に準じる | 不審な連絡・契約トラブルの相談先が分からない |
| 警察庁 サイバー事案相談窓口(オンライン) | e-Gov電子申請経由で受付 | 24時間受付(回答は窓口の対応時間内) | 不正アクセス・不正ログインの被害を相談・通報したい |
IPAは2026年11月2日のプレスリリースで、相次ぐ不正アクセスによる個人情報漏えいの公表を受けて、この相談窓口の体制を強化すると発表しています。緊急の金銭被害(不審な送金・決済が進行中など)は、警察への通報(110番)を優先してください。
なぜ漏えいの通知が来るのか?企業側の報告義務
2022年4月施行の改正個人情報保護法では、本人の数が1,000人を超える場合のほか、要配慮個人情報(病歴・犯罪歴など)が含まれる場合や、不正アクセスなど不正の目的による漏えいの場合、財産的被害が生じるおそれがある場合も対象になり、これらのいずれかに該当すると事業者は個人情報保護委員会への報告と本人への通知を行う義務を負います。以前は「望ましい対応」とされていたものが法律上の義務になった形です。つまり、サービスから届く通知は任意の善意対応ではなく、法律に基づく義務的な連絡であることが多いという前提で読むと、通知の内容を落ち着いて確認しやすくなります。
今後同じことが起きないための備え
漏えいそのものは利用者側で完全に防げるものではありません。一方で、被害が広がるかどうかは利用者側の普段の習慣で変わります。
- パスワードを長く複雑にし、サービスごとに使い分ける
- 多要素認証・パスキーを設定できるサービスでは設定する
- 個人情報の登録は、本当に必要なサービスに必要最小限の範囲で行う
- PCやスマートフォンのセキュリティソフトを導入し、フィッシングサイトへのアクセスを検知できる状態にしておく
パソコンのセキュリティソフトの必要性や選び方はPCのセキュリティソフトは必要?不要なケースと選び方・比較、公衆Wi-Fi利用時の通信保護やVPNについてはVPNは必要?個人情報漏えい対策でできること・できないことで、それぞれ詳しく解説しています。
まとめ:焦って判断せず、順番に対処する
個人情報漏えいの通知が届いたときは、まず本文内のリンクを開かずに公式サイトやサポート窓口で事実を確認し、該当サービスとパスワード使い回し先の変更、クレジットカード情報が含まれる場合はカード会社への確認という順番で対応します。判断に迷う場合は、IPAの情報セキュリティ安心相談窓口(03-5978-7509)や警察相談専用電話(#9110)、消費者ホットライン(188)といった無料の公的窓口を使ってください。「これをやれば絶対に安全」という対処法はありませんが、順番通りに手を動かすことで、二次被害につながる可能性は確実に下げられます。

